有機野菜販売を手がける土屋のり子さん インタビュー

2014年11月08日

土屋さん5

<プロフィール>
東京都千代田区出身
大学卒業旅行・2度のインド留学(Banaras Hindu University, Hindi Advanced Diploma Course)を通じてインドに根を下ろすことを選択。
2012年8-10月小学生のお子様とともに渡印。
現在は「トマト・プロジェクト」にて、オーガニック認証農園などからの有機・無農薬野菜配達を通じ、安心/安全をより多くの家庭に届ける事業に日々奮闘中。
 
 

Q: インドとの出会いから現在にいたる経緯を教えて下さい。

A: 大学の卒業旅行に選んだのがインドでした。2ヶ月間旅行しましたが、当時のインドの印象は、正直いいものばかりではありませんでした。しかし、日本に降り立った途端、インドに帰りたくなってしまったのです。これは今でも不思議です。
「不自由な境遇に置かれているはずのインドの女性がなぜあんなに幸せそうに笑えるのか」、それを解明したい思いで、ヒンディー語を学び、社会人経験を経て、92−94年、97-99年の2回にわたってバナーラスへ留学しました。
インドで日本人の夫と知り合い、結婚。娘が一人おります。移住を前提で娘がインドに適応できるのかを見極めるために、3年前、かつての留学先だったバナーラスへ旅行しました。娘がインドを気に入り、2012年10月に娘とインドへ参りました。

Q: インド留学時代で、特に印象に残っていることはありますか。

A: 自由な日本から来た私から見ると、インド人女性はずいぶん不自由そうに見えました。結婚相手はもちろん、1人では買い物にも出られず、外で働くことも、自立もできない。…なのに、なぜあれほど屈託なく笑い、幸せそうなのか。それが一番の謎でした。インド人家庭でのホームステイを通じて学んだことは、インドの方々の「足ることを知る生き方」でした。当たり前のことに感謝する、狭いけど深い、そんな生き方に共感しました。ひとり一人がバナーラスを構成する重要な役割を担っていることも感じました。
 
Q: 土屋さんの考えるインドの魅力とは何でしょうか。

A: 自分が自分らしくいられるところ、だと思います。

Q: 現在取り組んでいらっしゃる「トマト・プロジェクト」について教えてください。

A: デリー周辺や遠隔地の農園と契約を結び、有機野菜を主に日本のお客様にお届けする事業に従事しています。会社名はThe Earth & Hospitality Pvt. Ltd. です。
個人のお客様向けの野菜宅配を主としていますが、一部レストランへも卸していま
す。現在は個人宅への配送が8割、ピックアップ形式(スルターンプル)が2割です。注文方法は、インターネットサイトを通じ注文を受付け、木曜午後にサウスデリー、金曜午後にグルガオンのお宅へ配送、土曜午後にスルターンプルでピックアップを受け付けています。

Q: どうして有機野菜宅配ビジネスを始められたのでしょうか。

A: インドは世界有数の農薬使用国で(日本もそうですが)、近隣のマーケットで売られている野菜には多量の農薬が使われている、とインドの友人に教えられました(特にオクラ、ほうれん草)。私も一人の子を持つ親として、安心・安全な食べ物を子どもに与えたいと考えていました。そんな矢先、あるご縁でヒマーチャル州の農園の方と知り合い、子を持つ親として思いを同じくする方々に農園の野菜を販売したことからスタートしました。

Q: 取扱う野菜は、いったいどういった農園でとれたものですか。

A: ハリヤーナの2つの農園はインド政府が認めたオーガニック認証農園です。ヒマーチャルにある農園は水道水も飲める水のきれいな地域で無農薬・低農薬で野菜を栽培しています。
 オーガニック認証を取得するには国際的に定められた基準に照らして、農薬を使わず、有機肥料を使用して農園を管理。毎月日誌を提出、年2回政府機関、年2回認証機関の監査を3年間受けて初めて取得が可能です。また取得後も認証農園であるためには同様の検査を受け続け、毎年更新していく必要があります。
 ハリヤーナの農園のひとつでは、地下水を濾過して与えるこだわりぶりです。またハリヤーナの別の農園では55の農家が集まり一つの農園を構成しているので、広範囲で有機農法を実践でき、様々なバラエティの野菜を取扱うことができるようになりました。

Q: インドで有機野菜が広まらないのはどうしてでしょうか。

A: インドでは現在でも政府の農作物の買上げ制度が現存していることがひとつの理由です。農家を保護し、どんな野菜を作っても、政府が買い取ってくれる。そのため、農家が努力をしないという側面があります。身近にもSAFALと書いた八百屋を目にします。買上制度で流通している野菜です。
 また、農家の資金力と規模も影響しています。地方で細々と有機野菜を作っている農園は数多あるのですが、オーガニック認証を取るには資金力とある程度の規模が必要なので、取りたくても取得できない現状もあります。
 農家の教育不足も大きな問題です。教育を満足に受けられない農民達は、農薬の袋を見ても、希釈率の説明も読めない。結果として、希釈率が守られないまま散布するような事態も起こっています。

Q: ビジネスを経営していく上でのご苦労はありますか。

A: 現在ありがたいことにお問い合わせを多くいただいているほか、注文処理、配送、農園との連絡、新規商品の開拓で多忙を極めていて、できれば全てのお客様と対面してやりとりをしたいものの、できない状況なのが苦労というより歯痒い点です。

Q: このビジネスをしていて、良かったことを教えてください。

A: なんと言っても、お客様に安心と安全を届けられる、喜んでいただけることがやりがいとなっています。

Q: 現在の課題を教えてください。

A: 更に沢山のお客様に野菜を届けたいです。一方でフェイスtoフェイスのおつきあいを大切にして行きたいと考えているので、それを守りながら、事業規模拡大に伴う人材確保、物流、決済の方法を模索しています。
 

Q: 将来挑戦してみたいことはありますか。

A: 現状は野菜をメインに取扱っていますが、ゆくゆくは、取扱い品目を食品全般に拡大していきたいと考えています。牛乳・卵は既に取扱いがありますが、鶏肉等自分が一消費者として必要な食品を全て扱えたらいいですね。
 また現在は100%日本人のお客様ですが、将来的にはインド在住外国人、インド人と顧客層をぜひ拡大していきたいです。有機産物を買うお客様が増えることで、作り手が有機の価値と意義に気づき、有機や無農薬が当たり前になったらどんなにいいかと思います。

Q: 最後にデリーNCR地区にお住まいの会員へメッセージをお願いします。

A: 皆さまと共に健康・安心・安全について考え、より良い環境を作り出すべく努力をし、未来へ残すものを大切に考えていきたいです。「トマト・プロジェクト」がその一助になれば幸いです。

(インタビュー担当者より。)
優しい笑顔をたたえ、生き生きと情熱的にインドの魅力について、有機野菜ビジネスについて語っていただきました。インドの魅力を皆様に知ってほしいというお考えをひしひしと感じました。ご協力ありがとうございました。

参考URL:
○トマトプロジェクト ホームページ
http://organicveg.cart.fc2.com
https://www.facebook.com/groups/178748582331834/ (facebookユーザーのみ)
インドのオーガニック農園認証機関のホームページ(英文)
http://www.indocert.org/index.php/en/
インドの農作物買上制度に関する記述
http://www.nohken.or.jp/WTO07.pdf 14ページ目