「さくら会」金武医務官インタビュー

2014年09月14日
「さくら会」のメンバーが、インドの「大気汚染」や「デング熱」、「蚊」に関することなど、日頃疑問に思っていることを解決するため、日本大使館の金武医務官にお時間をいただき、インタビューを行いました。以下、インタビューの内容をお伝えします。

■大気汚染
Q1.冬場の大気汚染は今まさにある問題ですが、実際に呼吸器、循環器にどのような影響が出るのでしょうか?

医務官:呼吸器系では非常に小さな粒子が肺の奥深くに入ることによって、大きな粒子では起こりえないようなことが起こると考えられています。大きな粒子は、肺の奥に到達する途中で、気管支や細気管支の壁にくっついて多くが喀出(痰に混じって外に出ること)されると考えられますが、PM2.5などの粒子の細かいものは、一番奥の肺胞にまで到達し、なかなか体の外に排出されないということが問題視されています。WHOは昨年,PM2.5などの微小な粒子状物質を、発がん性がある物質の一つに分類しました。また、かつて我が国が四日市ぜんそくなどで経験したように,大気汚染と喘息などの呼吸器疾患の発症には大きな関連があるといわれています。
循環器系では,微小粒子状物質は肺胞レベルで末梢血流に影響をあたえ、最終的に循環器系にも影響を与えると考えられています。
Q2.インドにいると、日本で生活していたのと比べどのくらいガンを発症するリスクが高くなるか、などのデータはありますか?
医務官:私の知る限りはありません。
Q3.日本でも以前、光化学スモッグ注意報が発令され屋外での活動を控えるよう注意喚起がありましたが、その時代もすでにPM2.5は存在したと考えられますか?
医務官:かつてはPM2.5という概念がなくPM2.5濃度として計測されたことはないと思いますが、非常に細かい粒子状のものは以前から存在したと思います。PM2.5というのは、新たに出現した物質ではなく、新たにできたカテゴリーであって,以前から存在していた物質であるとお考えいただいていいです。
Q4.PM2.5は何から排出されるのでしょうか?
医務官:途上国の大都市部の近年のPM2.5などの粒子排出原因は,一般的には車両による排ガスが主な原因と考えられています。当地の専門家も、「デリーの大気汚染は,自動車の排ガスが一番の原因だ」とおっしゃっていました。あとは、暖房に使われる化石燃料の燃焼、レンガを焼成する際の煤煙なども原因と考えられています。また、中東からインドまではもともと土漠地域で目の細かい砂が舞い上がる自然現象があり,これも原因の一つではないかといわれています。ただ、大都市部で特にPM2.5の濃度が高いことを考えると、やはり自然のものより排ガスなど人為的なものが一番の原因と考えるのが自然だと思われます。
Q5.有効な予防策について、「窓を開けない」、「空気清浄機を使う」、「マスクをする」といったほかにあればご教示ください。また、有害物質をできるだけ体内へ取り込まないようにする予防策がありましたら、教えて下さい。
医務官:個人レベルでできる効果的な大気汚染対策としては、やはり、大気汚染の顕著な日には、「外出を控える」、「外出時にはマスクをする」、「窓を解放しない」、「空気清浄機を日常的に使う」ということだと思います。これ以外の対策を取ることは容易ではありませんが、大気汚染の顕著な冬期に合わせて長期休暇を取るのも一案かもしれません。
大気汚染物質の濃度は、冬期以外は比較的低くなります。また、風向きや気温、交通量 などでも短時間で変化します。大気汚染を恐れ全く外出しないのも健康にはよくないですので、デリー準州政府や地球科学省などのウェブサイト等を参考にしながら、メリハリを付けて外出することが大切だと思います。
(デリー準州:リアルタイム大気質データ)
http://www.dpccairdata.com/dpccairdata/display/index.php
(地球科学省:SAFAR)
http://safar.tropmet.res.in/

Q6.マスクはPM2.5に有効なのでしょうか?
医務官:PM2.5に有効な工業用の防塵マスクを一日中つけて日常生活を送ることは実際には困難でしょう。PM2.5は、インドだけでなく例えば日本でも一定の濃度で存在するもので、高い日には外出を控えるなど、メリハリのついた生活を送られるのがよいと思います。デリーに関して言えば、冬場、特に10月頃から1月いっぱい頃までPM2.5の濃度は高くなり、2月頃になると改善するという傾向があります。
Q7.冬季の霧(Fog?Smog?)と大気汚染との関連は?
医務官:確かに,大気汚染の顕著となる時期とデリー市内で霧の発生する時期は重なっています。一般的に,微小な大気汚染物質が大気中に多く浮遊していると,湿度が高く気温が低い場合,これを核に水蒸気が付着して霧が発生しやすいといわれています。ですので,冬季の霧と大気汚染物質の濃度は一定の関連があるといえますが,空気のきれいなノルウェイの森にも霧は立ち込めるでしょうから,デリーで発生するすべての霧が大気汚染物質の濃度が高いことによるとは言えないのかもしれません。
Q8.有害物質を体内に取り込んでしまった場合、なにかデトックスになる食べ物、方法はありますか?
医務官:大気汚染物質については,残念ながらそのような情報は持ち合わせていません。
Q9.PM2.5などの汚染物質がある大気の中で過激な運動、たとえばマラソンなどをすると、さらに危険性は高くなるのでしょうか?
医務官:過激な運動では呼吸数が増えますし,呼吸が深くなり肺の奥まで大気を吸い込むことを考えれば、長時間継続的に過激な運動を行えば,大気汚染による人体への影響は強くなると思います。かといって,全く屋外に出ない生活が健康的とも思いません。先にも述べましたが,大気汚染の激しくない時期にメリハリをつけて屋外活動をエンジョイされることをお勧めします,
Q10.デリーの大気汚染、水質汚染は顕著で、毛髪検査にてヒ素やカドミウム等の有害部質が明らかに高く検出された方もいると聞きます。このような環境で長く暮らす事で、将来的に脳神経系の疾患の罹患率が上がることは考えられますか?
医務官:インドの在留邦人の方で日本に戻られた際に毛髪のカドミウムなどの検査を受けられた方のお話は、2013年7月下旬に小職もお伺いしました。本件、ある企業の産業医の先生が日本国内の専門家に意見を聞いたところ、「体内の有害ミネラルの検査は、本来、外的環境素因が影響しやすい毛髪ではなく血液や尿をサンプルとして実施されるべきで、毛髪を用いた場合の検査結果については広く受け入れられた基準値がない」との答えだったそうです。これをもってインドではヒ素やカドミウムへの暴露がないと言っているわけではありませんが、お伺いした毛髪検査結果だけでは、十分な根拠とはなっていないのではないかと思われます。もう少し情報を集めてみたいと思っています。
■デング熱
Q1.輸血が必要になるほどの重症化のケースについて、どういった経過の場合にそうなるのか、また重症化する割合は?
医務官:デング熱では、通常4~7日間持続する突然の高熱で発症します。重症例ではこの熱が解熱するころに、「繰り返す嘔吐」、「強い腹痛」、「(歯茎や鼻、消化管などの)粘膜からの出血」、「呼吸困難」、「(意識がもうろうとなるなどの)ショック症状」、「血液検査で急激な血小板の減少やヘマトクリット値の上昇(血液濃縮)」を伴う事があるとされています。 米国疾病対策センターによれば、デング熱患者のうち約5%が生命に関わるような重症 (デング出血熱、デングショック症候群)に陥るとされています。 
Q2.重症化してしまった時の対応について具体的に教えてください。
医務官:重症化の有無に関わらず、デング熱は全例、医師による診断と治療が必要です。自己判断や自己治療をせず、デング熱を疑ったらすぐに最寄りの医療機関を受診してください。その際、小さなクリニックではできない検査や治療があります。都市部の大規模総合病院を受診するのが望ましいでしょう。 重症化してしまった場合、多くが血小板輸血や集中治療を必要とします。主治医の指 示に従って治療を受けていただくのが基本です。 
Q3.病院で輸血を受けても本当に大丈夫ですか?病院が用意している血液は本当に安全   ですか?(知人は、医師からインドの輸血血液は安全ではないと言われたそうです。   輸血後、数か月おきに血液を介して感染する病気の発症がないかのチェックを病院 で行っています。) 
医務官:インドの医療機関では、輸血に用いる血液に対して、HIV(エイズウィルス)、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、マラリアのチェックを行う事になっています。大都市の私立総合病院であれば、輸血を受けてもこれらの感染症に感染する危険は特段高くないと考えられます。 
Q4.昨年、デング熱にかかり、輸血も一度しました。もし、また同型のデング熱にかか  った場合、デング出血熱やデングショック症候群になりやすいと聞きました。一度デング熱に罹患歴がある場合、これらはどれ位の確率で発症するのでしょうか。 
医務官:デング熱ウィルスには4種類あり、それぞれ1回感染すると終生免疫を獲得し、 同型のデング熱ウィルスには二度と感染しません。 重症型のデング熱は、デング熱全体の約5%でみられるといわれています。ですので、   重症型に陥りやすいと言われている2回目の感染では、重症化の確率はそれ以上なのだと思われますが、はっきりとした報告や研究は自分の知る限りまだありません。デング熱ウィルスに感染しても、実は75%程度は無症状だと言われています。ですので、そもそも「初めて」デング熱を発症した人でも、果たしてそれが、本当に「1回目」のデング熱ウィルスへの感染かどうかは分かりません。したがって、2回目にデング熱にかかった場合の重症型デング熱の発症率を算出することは非常に難しいと言えます。 
Q5.子供に関して:「デング熱かも。」と疑って、早めに病院に行ったほうがいい初期症状は、どのようなものがありますか?たとえば、「鼻水などの症状がないのに、突然熱だけ上がった時」とか、「3時間以内に急に39度過ぎまで上がった時」など、「そうかもしれないサイン」について教えてください。
また、「様子を見ていてもいい時間は、どのくらいか」、「こんな場合は手遅れになるかも」という場合など、ご教示いただけましたら幸いです。 
医務官:「デング熱の流行シーズン(8月末から11月末)」に、「突然の39℃近い高熱と頭痛や眼の奥の痛み」があれば、デング熱の可能性が強く疑われます。
お子さんに限りませんが、「デング熱かも」と疑ったら、とにかく早めに病院を受診してください。
初期症状ではありませんが、出血傾向(「鼻血が止まらない」とか、「ぶつけた記憶がないのに内出血ができている」など)があれば、特に早く病院を受診すべきサインです。
自己判断は危険ですし、デング熱の流行シーズンでもデング熱以外の感染症にかかることもありますので、疑いがあれば速やかに医師の診察を受けてください。
「様子を見ていい時間」は難しいですが、深夜に発熱し翌朝まで様子を見る程度はやむを得ないかもしれませんが、疑ったら待つことなく医療機関受診が原則だと思います。
不幸にも出血傾向がコントロール困難だったり、薬剤治療に反応の悪いショック症状を認める場合は危険な状態と言えますが、通常、デング熱ではきわめて希とも言えます。 
Q6.血小板が普段より少なくなっている場合は、様子を見てわかるのですか? 
医務官:血小板数は、正常値が15万~45万/μ㍑と、もともと正常値に幅のある数値で  す。血小板数が正常値より多少減少しても、自覚症状がないことがほとんどです。一般的に血小板数が5万/μ㍑以下となると、血が止まらないなど何らかの出血傾向を認める可能性が出てくると言われています。 
Q7.重症時の本人の自覚症状はどのようなものがありますか? 
医務官:重症化する際にはQ1.に書きましたような様々な症状が出ることがあります。もとより重症化していないデング熱でも、高熱や頭痛、眼窩痛(眼の奥の痛み)、筋肉痛、関節痛など、つらい症状を伴います。 
Q8.万が一、輸血が必要となった時、希少な型(例えばRH-型)の場合は安全な血液の確保が難しくなると思われます。そのような場合、シンガポールなどへの搬送を考えた方がよいでしょうか? 
医務官:難しい問題ですが、血液の在庫は病院により違うと思います。まずは主治医に相談し、血液の確保が困難と判断される場合には、移送の可能性について検討する必要があるかもしれません。ただし、全身状態が悪い場合には移送も危険を伴いますので、ます主治医と十分ご相談いただくことをお勧めします。 
Q9.インドで成分輸血の必要があると言われた場合、どのように対処したらいいでしょうか? 
医務官:デング熱では、血小板数が低下した場合に、血小板の成分輸血が必要となることがあります。デング出血熱で出血がひどく貧血となれば赤血球の輸血が行われることも考えられますし、一般的にデング熱では血漿成分が血管外に漏出する現象が起こりますから、これに対して血漿製剤の輸血が行われることもあり得ます。なぜ、どんな輸血が必要なのか、主治医から納得のいくまで説明を受け、治療方針について十分に相談して下さい。 
Q10.デング熱の基本情報について、詳細にご回答いただきましたが、一番皆さんが心配しているのは、病院で輸血が必要と言われたときに、受けてもいいものなのか、ということだと思いますが、この件についてはどのようにお考えですか? 
医務官:上で申し上げた通り、インドの都市部の私立総合病院であれば、HIV、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、マラリアのスクリーニングチェックを受けることが義務づけられており、長年にわたりこの制度は確立されています。
ただし、輸血用血液を使うことが100パーセント安全かというと,誰もその保証はできません。これは日本でも同じことが言えます。インドだけの問題ではありません。(*医務官より毎日新聞からの記事(2014.1.6、http://sp.mainichi.jp/m/news.html?cid=20140106k0000e040131000c)を提供される)日本でも不幸にも輸血用血液よりHIV、B型肝炎、C型肝炎、に感染したとの報告が今でも少なからずあります。そもそも輸血を受けるということにリスクがない訳ではなく、リスクの程度の差の問題になると思います。先進国(日本など)に比べ、そのリスクの程度の差があまりにも大きければ輸血を受けるのは避けた方がよいと思いますが、インドのように特段輸血による感染症が問題になっていない(少なくともそういう情報に触れていません)国では、現時点で危険だという根拠はありません。
その上で、日本人の血液を輸血に使いたいという場合、医療機関の協力が得られるのであれば,お使いになるのは問題ないと思います。 
■蚊
Q1.インド滞在歴の浅い方に向けて、気を付けるべきことをご説明願います。
医務官:インドで蚊によって媒介される感染症は、デング熱、チクングニャ熱、マラリア、フィラリアなど各種有ります。例年、モンスーンによる雨期が終わる8月末から蚊が増え、これとともに11月末頃まで、これら蚊の媒介する感染症の流行シーズンとなります。この時期には特に蚊に刺されないように注意してください。都市部ではデング熱、地方ではマラリアにかからないために、蚊に刺されないように気をつけて下さい。
住宅を選ぶ際には、高層階の方が蚊は飛んでこないと言われています。換気扇など隙 間があれば、網でカバーをつけることも一案です。
また、周囲に蚊の生育環境を作らないことも重要です。たとえば、植木鉢や水瓶の中、 古タイヤの内側の溝や水たまりでも蚊は生育します。ガードマン小屋に水冷機があれは、中の水はこまめに換えさせてください。 
Q2.デングウィルスを運ぶ蚊として有名な、体がシマシマの蚊(ネッタイシマカ)以外もデングを運ぶと聞いたことがありますが、本当でしょうか? 
医務官:本当です。デング熱を伝搬するのは、ネッタイシマカとヒトスジシマカです。ただ、主役はやはりネッタイシマカです。ちなみに、ヒトスジシマカは日本にもいます。 
Q3.モンスーンの時期に、よく夕方になると殺虫剤をまいている人をみかけるのですが、市販の殺虫剤はものすごく強力なものでしょうか? 
医務官:この時期、当局のスタッフが蚊の幼虫や成虫を殺す薬品を噴霧しています。また、当地の日用品店で買えるスプレー式の家庭用殺虫剤はほとんどがピレスロイド系と呼ばれる殺虫剤(成虫を殺す)です。いずれも人体に悪影響を及ぼす可能性が有りますが、長時間、高濃度で吸入しないようにしていれば、大きな問題は起こらないと思います。 
Q4.市販の蚊よけグッズ、特にリキッド型でコンセントに差し込むタイプものは人体にあまり好ましくないと聞いたことがあります。実際のところ、影響はありますか? 虫よけスプレーや虫よけジェルなどを毎日使用すると、体に悪影響はないのでしょうか? 
医務官:コンセント式、電池式、スプレー式、最近は見かけなくなったマット式など、市販の殺虫剤にはいろいろな剤型がありますが、その成分はほとんどが合成ピレスロイド系と呼ばれる「殺虫剤」です。ピレスロイドはそもそも蚊取り線香の殺虫成分であり、除虫菊という植物から抽出された天然ピレスロイドを化学的に合成したものです。高濃度で長時間吸入すると人体に影響が出ると思われますが、たとえば、デング熱の流行する8月末から11月末の3ヶ月間、寝室と居間でコンセント式蚊取りを持続的に使用したとしても、ほとんどの場合、人体への大きな影響はないと考えます。
虫除けスプレーやジェルは、前述の「殺虫剤」とは全く別の成分で、ほとんどの製品がDEET(ディート)と呼ばれる薬品を有効成分としています。虫除けは、「昆虫忌避剤」と呼ばれ、「殺虫剤」のように虫を殺す作用はなく、虫が寄って来ないようにする薬品です。日本では、濃度の低い(5~12%)商品が多いですが、10%以上の商品でないと効果が不十分です。また、10%の製品でも効果はおよそ2,3時間と言われていますので、長時間の屋外活動の際には繰り返し塗る必要があります。海外でのこれまでの使用経験から、DEETは安全性の高い薬品であるとされており、35%以下の濃度であれば、高齢者や妊婦に悪影響を来すことはないとされています。一方、小児では10%前後のものを使用するのがよいとされて、6箇月未満の乳児には使用を避け、6箇月から2歳までは1日1回、2歳から12歳までは1~3回の使用にとどめることが日本では厚生労働省により推奨されています。眼・鼻・口など粘膜のある部位、日焼けしたばかりの皮膚、創傷部位には使用を避け、子供の場合には手で眼や口をこする事が多いことから、手首より先には塗らない方がよいとされています。これも、デング熱の流行する3ヶ月間、毎日使用したとしても、ほとんどの場合、人体への大きな影響はないと考えられます。 
■その他
Q1.水質汚染について
フィルターウォーターやペットボトルの水はどのくらい安全なのでしょうか? 
医務官:フィルター水は、フィルターの性能にもよりますが、細菌やウィルスを除去するほどの高性能のものが広く流通しているようです。このようなフィルター水を、加熱する調理や歯磨きにお使いいただく分には、人体に大きな影響はないと考えられます。飲用しても大丈夫のようですが、飲用はできればペットボトルの水にしてください。また、フィルターは決められた間隔で交換してください。ペットボトルの水については、メジャーな銘柄のものであれば、飲用にしていただいて大きな問題があったという情報に触れていません。見たこともない銘柄や、シールがしっかりされていないものは避けていただくのが無難です。高級レストランでも、コップに入ってくる水や氷、シールの外されたボトルの水は、安全ではないと疑ってかかる慎重さも必要だと思います。 
Q2. 食品添加物について
インドの食品には相当な量が入っているのでしょうか?日本の基準と比べ、多くの量が入っているのでしょうか? 
医務官:インドの食品の添加物について、個別の品目・物質ごとの検査データで公表されているものはないようです。ですので、多いかどうか判断できないのですが、保健・家庭福祉省の機関である食品安全基準局(FSSAI)が、国際基準を参考にして、法律に基づき監視を行っているとされています。 
Q3.ハエについて
ハエが気になります。ありとあらゆるところにいますが、人体に悪影響はないのでしょうか?ばい菌を運んでいるのかどうかが怖いです。 
医務官:旅行者が腸チフスになる最も多い感染経路は、脚に腸チフス菌が付着したハエが食物に止まり、これを食べることによるとする文献があります。ハエは「ばい菌を運んでいる」というご認識をお持ちいただいていいと思います。屋外でのBBQ,露天商の売る食品にハエが多くたかっていれば、食べないようにするのが無難です。 
Q4.インド野菜の農薬について
・インドで使用されている農薬にはどのようなものがありますか? ・農薬を落とす方法について教えてください。 ・インドの野菜を食べ続けた場合の残留農薬が人体に及ぼす影響についても教えて下さい。 
医務官:インド農業省のインド食品安全基準局(FSSAI)が行った調査によれば、ヘプタクロル、シペルメトリン、キナルホス、アルドリン、クロルデン、ジクロルボスなどが野菜や果物から検出されています。特に、ナスのヘプタクロルは、基準値の8倍以上が検出されたようです。
農薬を可能な限り落とすための方法としては、(1)水道水を流して繰り返しこすり洗う、(2)皮をむくことができる果物や野菜は、よく洗ったあとに皮をむくという事になります。市内の輸入雑貨・日用品店には、野菜用の洗剤が時々売っているのを見かけます。農薬を洗い落とすのにはこれらの利用もよいと思いますが、野菜を洗った後、よく濯ぐことを忘れないでください。
高濃度の残留農薬が付着した野菜を長期間にわたり継続的に摂取すると、神経毒性をきたしたり、腎臓や肝臓、内分泌系に異常をきたすことがあるとされています。インドでは見てくれが悪い野菜や果物の方が、残留農薬が少ないと言う専門家もいます。可能であれば、オーガニック野菜や家庭菜園の野菜を積極的に取り入れるのもいいと思います。インドで暮らしている以上、インドの野菜を食べないわけにはいきません。「よく洗い、皮をむく」を心がけてください。

Q5.感染症について
感染症にかかる確率が、インドにいると日本に比べて高いような気がするのですが、細菌感染、化膿の確率はやはりインドは高いのでしょうか? 
医務官:細菌感染症の感染率が高いという印象は持っておりません。もちろん日本にはない熱帯感染症(デング熱、マラリアなど)などは当然高くなりますが。治療についてはインドと日本で差が出てくるかもしれません。

Q6.抗生物質について
病院に行くと、すぐに抗生物質を処方されるのですが、出し過ぎのような感じがします。これについてはどうお考えですか? 
医務官:抗生物質の使い方は、インドと日本ではかなり違います。人間に病気を起こす頻度の高い病原体は大きく分けて2つあります。細菌とウィルスです。抗生物質はウイルスには効果がありません。感染症でも初期の症状だけでは細菌感染なのか、ウィルス感染なのかわからないことも多いのですが,インドではその判断がつかない段階で抗生物質が処方されるということも少なくないようです。抗生物質はインドでは安価であることも,抗生剤が汎用される一因かもしれません。最近,抗生物質の乱用による抗生剤耐性菌の出現が国際的な問題となり,発生源の一つとして名指しをされたインドの医師たちの意識も変わってきているのではないかと思います。

Q7.医療システムについて
医療システムが全く日本と違います。カルテ、処方箋の管理もすべて患者が管理し、また、処方箋も何が書いてあるのかよくわかりません。間違った処方をされているのではないか、間違った服用をしているのではないか、とても不安です。 
医務官:処方箋に書いてある字が読めない、こんな読めない字で薬局はどうやって認識しているのか薬の詳細を薬剤師に聞くと答えがあいまいで医者に聞くように言われる、医者に電話をすると診察中で電話がつながらない、などといったエピソードは,多くの日本人の方がご経験されているのではないでしょうか。外国人が利用するような市内の私立総合病院のシニアの医師たちは,欧米で研修を積んでいる医師が多く、当たり外れはあるかもしれませんが診断から処方までの知識と診療レベルは先進国水準といっても差し支えないと思います。一方でその先のサービスについては、注意しなければいけません。医師が指示した通りの検査が正しく入力されていないこともありますし,名前が間違っていることも日常茶飯事です。薬の飲み方や用量などについての説明が不十分と感じることも多いです。また,例えば健康診断をご夫婦で受診されるとします。名字は一緒なので、日本人の名前(ファーストネーム)に慣れていない検査技師は男女の区別ができず取り違える可能性もある訳です。そのような場合は、可能であればご自身で自分の名前の採血スピッツに自分の血液が採取されたことを確認するなど、常に「間違いが起こらないか?」という観点でご自身でも注意深くプロセスを観察していただく心構えも重要かもしれません。また,病院受診の際には知り合いのインド人の方に同行していただき、不明点はその場で通訳,説明してもらうのもいいでしょう。

Q8.医務官への相談
医務官に相談したいことがある場合、どちらに連絡すればよいですか? 
医務官:大使館にお電話いただき、医務官に繋いでほしい旨おっしゃってください。お困りになったときには遠慮なくご連絡ください。

Q9.メンタルヘルス
(1)精神的にもタフなインドの生活ですが、メンタルヘルスに不安を感じた場合、心療内科にかかるのも解決方法の一つかと思います。その場合やはり日本の先生の方がよいのでしょうか? 
医務官:意見の差があるかもしれませんが,メンタルケアについては母国語(日本語)で受けていただくのが基本だと私は考えています。現地での緊急対応は現地医師にお願いしなければならない場合も多いですが,落ち着いたら母国語(日本語)の環境にシフトしてケアを受けていただくことが大切だと思います。異文化,異言語の外国で暮らすことによって鬱状態になることなどは,インドに限らず海外ではよく起こることです。そのような兆候を見逃さないように、本人も含め周りの人も気をつけてください。兆候が見られ、海外にいることが原因なのであればしばらく帰国し様子を見るなど、リスクファクターからの離脱を考える必要があると考えます。

(2)メンタルケアに関わらず病院に行って、症状を自身で説明したり、説明を聞いたりというのはとても大変です。通訳を付けるのは有効ですか? 
医務官:おっしゃる通りです。語学が得意で日常業務は英語で充分遂行されている方であっても,病院に行ってご自分の体調をうまくニュアンスまで説明できる方は多くないと思います。また,病気や症状,検査の名前を英語で言われると,完全に理解することは容易ではありません。医療は,十分なインフォームドコンセントを受け,患者側も自分がどのような病態でどのような医療行為が行われるのか十分理解したうえで受けていただくべきです。そういった意味でも専門用語に不安があれば,病院受診に通訳をつけ正確に病状を納得したうえで医療を受けていただくことは大切なことだと思います。 
さくら会:本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきありがとうございました。
以上